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素晴らしかった下倉楽器ソロコンテスト

中高生のタフな技術力&精神力に脱帽

毎年恒例となっている下倉楽器主催のソロコンテストが、今年も華々しく開催されました。上の写真は、中学生の部で最優秀賞を獲得した野地梓恩(のじ・しおん)さん。千葉県市川市立第七中学。演目はリヒャルト・シュトラウスのホルン協奏曲第一番より(一楽章を短縮したヴァージョン)。

こちらは、高校の部の最優秀賞、荻美波(おぎ・みなみ)さん。茨城県立水戸第三高校。演目は尾高尚忠のフルート協奏曲の第一楽章(!)。自らの選曲で、なんと年明けからの練習で完璧に暗譜して完奏!音のひとつひとつの粒立ちが見事で、完璧に自分の音楽を奏でていた。将来、どんなことになっちゃうんだろう…と、夢が膨らんでしまい…おっと、ごめんごめん、まず「どこで、なにがあったのか」など、基本的なことをきちんと書くね。あまりにコーフンしてしまってごめんなさい。

 

2017年2月11日、お茶の水の駅のすぐそばにある「クリスチャンセンター」にて朝10時から開催された下倉楽器主催のソロコンテスト。今回無事にステージに登場したのは、中高生あわせて60名。

無事に、と書いたのにはワケがある。

エントリー自体はもうちょっと多かったのだけど、今年のインフルエンザはやはりかなりすごいみたいで、残念ながらインフル感染のために欠席された方が数名。なかには伴奏者がインフル欠場となり、ピアノ伴奏なしで見事にソロを吹ききった猛者も。全出場者中ただひとりチューバでエントリーした都立足立東高校の竹川隼人さん、あなたのことです。ハダットの協奏曲、勇猛果敢に単独で挑戦したあなたの姿におじさんは感動しちゃったよ!

いやいや、他にも沢山の感動シーンが。超難曲に挑み、ところどころで失敗してもくじけずに最後まで吹ききるその姿。なんだかんだ言い訳をしながら挑戦しないですましている大人プレイヤーにこそ、その姿をみせてやりたかった。

ソロなんて無理、とか。

練習不足で、とか。

若いからできるんだよ、とか。

そういうの、恥ずかしいと思った。

このソロコンは基本的にクラシックを演奏するスタイルで、難易度はともかくすべて本格的にその楽器のために書かれたもの。「ともかく」とは書いたけれど、正直どの楽曲にもそこそこの難所があって、これを聴衆の前でひとり吹ききるのは並大抵のことではない。

完璧に暗譜して臨む凄腕の若者もけっこういて、手元採点(実はこっそり、ワタクシ独自の視点で採点していたんですね)でもそういう人はかなり高得点。いや、暗譜だから高得点というのではないよ。最初はまず目をつぶって音だけ聴いて、これはすごいみたいだ!と思ったら目を開けて確認…ということをしていたんですね。

上で紹介した荻さんも、そのひとり。演奏したのは高名な指揮者、尾高忠明の父である作曲家、尾高尚忠(ひさただ)の協奏曲。日本音楽史にその名を残す名曲を見事に演奏。たった一本の銀色の笛が会場を圧倒しました。

中学生のホルン奏者、野地さんも難曲として知られるリヒャルト・シュトラウスの協奏曲第一番を、制限時間の関係で抜粋ながら見事に演奏。

中学生が、リヒャルトを吹いちゃう時代なんですね…

「抜粋じゃないか」とか「カデンツァがないじゃないか」とか「まだ若いから早すぎるんじゃないか」とか…つまらんツッコミたくなるマニアがいるかもしれないけど、現場にいた人ならそんなツッコミがいかに虚しいかわかるはず。

彼女たちは、なんだかんだ理由を付けて「やらない」ヒトたちには絶対得られない、得難い体験をしたのです。

音楽史にその名を残す名曲に、若い感性でチャレンジすることがいかに大切か。

素晴らしい作品は、技術がつたないうちは内容的にも理解が及ばないかもしれない。

しかし、演奏する技術が上がってくるにつれてたくさんの養分を与えてくれるようになる。

彼女達のように、真摯に向き合い、ともかく形にしてみる、最後まで吹ききってみるという体験を若いうちに積むことは、必ずこれからの音楽人生とって貴重な体験となるはず。

出演者やそれぞれの受賞などについては、下倉楽器のHPにいずれ発表があるはず。金賞・銀賞・銅賞とランクがついても、みんな真摯な態度で音楽と向き合って板から、その点では全員がゴールド金賞!それはワタクシが自信を持って断言します。

そんな偉そうなことを言っていてヘタッピじゃん!と馬鹿にされないよう、頑張らねば。

(「バンドライフ」編集長・榎本孝一郎)